脂質異常症は生活習慣病のひとつで、血液中の脂質であるコレステロール(LDLコレステロール:悪玉コレステロール、HDLコレステロール:善玉コレステロール)や中性脂肪の値が基準値から外れた状態です。
コレステロールは生体機能を調節するホルモンの原料になったり、からだの一つ一つの細胞を被っている細胞膜に含まれ、細胞内、外部間の物質、エネルギーの出入りをさせる(膜の流動性を調節する)といった働きがあります。
中性脂肪はエネルギー源として働きますが、過剰になるとからだに障害をもたらします。
糖尿病と同様に自覚症状に乏しく、動脈硬化によって重篤な病気を引き起こすのが特徴です。
現在患者数は約220万人いるといわれており、増加傾向にあります。
脳梗塞や心筋梗塞にもつながる脂質異常症
血液中に脂質が増えたまま長い期間を過ごすと、増えた脂質が血管の内側に少しずつたまって、血管の中にかたまりを作っていきます。
それにより血液の流れが滞ってしまいます(動脈硬化)。
動脈硬化の初期段階では自覚症状はありません。
突然、心臓や脳の血管が詰まり心筋梗塞や脳梗塞の発作が起きて、その時にはかなり危険な状態となり命にかかわったり、身体にまひが残ったりしてしまいます。
このようになってしまってから脂質異常症の怖さに気づいても遅いのです。
日本人の死因の第2位と第3位を占めているのは、心臓病と脳卒中です。
これらはどちらも、動脈硬化が原因となって起こる血管の病気です。
普段から動脈硬化を防ぐこと、動脈硬化の検査を受けることはとても重要で他人事ではないのです。
脂質異常症の症状と原因
脂質異常症の原因は食生活と生活習慣が挙げられます。
食べ過ぎ(コレステロールの場合は飽和脂肪酸やコレステロール成分の過剰摂取、中性脂肪の場合は甘いもの、酒、油もの、糖質などエネルギー量の過剰摂取)、運動不足、遺伝的素因などが関与して発症します。
また糖尿病の方は中性脂肪の産生が増加し、喫煙者はHDLコレステロール(善玉コレステロールと呼ばれ、動脈硬化を予防する 働きがある)が低下します。
対処としては毎日適度の運動をつづけることでコレステロールや中性脂肪の値を下げることができます。
お食事による治療(食事療法)、運動による治療(運動療法)を行っても血液中のコレステロール値、中性脂肪値が下がらない場合にはどうぞお気軽にご相談ください。
それ以外にも注意が必要な項目をご紹介します。
仕事や家庭でのストレス
ストレスを感じると、身体の中では交感神経が刺激され、血管を収縮させ血圧が上がります。
また、体内で様々な物質がたくさん作られ、コレステロール濃度や血糖値が高まります。
こうした直接的な作用のほかにも、ストレスを感じると、食生活が乱れたり、お酒を飲み過ぎたりなど悪い影響が出やすくなるのはお分かりかと思います。
結果として、コレステロールや中性脂肪を増やしていってしまうのです。
ストレスの対処はなかなか難しいもので、個人差もありますがうまく付き合っていける方法を見つけていきましょう。
自分の身体の声に耳を傾けてみてください。
たばこ・喫煙習慣
たばこに含まれるニコチンは交感神経を刺激させる作用があり、血圧を上げ、心拍数を高めるなど心臓に負担をかけてしまいます。
他にも以下のようなことがあげられます。
- 中性脂肪のもととなる、血液中の遊離脂肪酸を増やす
- 血液中のコレステロールが酸化し、粥状動脈硬化が進行する
- 善玉のコレステロール(HDLコレステロール)濃度が低くなる
これらはいずれも動脈硬化を促進してしまいます。
1日も早く禁煙することをお勧めします。
脂質異常症の症状
脂質異常症は、生活習慣病の中でも特に自覚症状が見られず、定期的な健康診断で調べることでしか、病気を発見する方法はありません。
脂質異常症の診断は、なるべく12時間以上食事をとらずに採血をして血中の脂質を測定します。
ただ、実際に検査結果の数字を見てもそのまま放っておいてしまう人がたくさんいらっしゃるのが現状です。
症状がないのはまだ初期の段階である証拠です。
大きな病気に発展してからでは遅い、ということをご理解頂けたらと思います。