吐き気とは、みぞおちから胸の辺りがムカムカし、嘔吐が起こりそうな不快感を指します。
また、吐き気は、悪心(おしん)ともいいます。
消化器をはじめ、心血管、脳神経、目や耳などのさまざまな疾患が原因となり起こるもので、なかには命に関わる危険信号である場合もあります。
日常生活での考えられる原因
食べすぎ・飲みすぎ
暴飲暴食によって胃に負担がかかると、胃の粘膜に炎症が起き、胃の痛みや胸やけ、吐き気などの症状が起こることがあります。
また、アルコールを飲み過ぎると、肝臓がアルコールを分解する過程でできる有害物質・アセトアルデヒドの解毒が間に合わなくなり、その防御反応として、吐き気・嘔吐が起こります。
アルコールを飲み過ぎてしまったときは、水分を取るなどして、安静にしましょう。
ストレス
吐き気は、自律神経が嘔吐の指令を出す脳の特定の部分に信号を送ることによっても起こります。
ストレスによって自律神経が乱れてしまうと、体にさまざまな症状があらわれますが、その症状の一つとして、吐き気が起こることもあります。
食中毒(食あたり)
腐敗した食品や、毒のある食品を食べると、激しい胃の痛みとともに、吐き気・嘔吐を起こすことがあります。
きのこや海外の生水(水道水)、ふぐなどによる食あたりは、年間を通してよくみられます。
また、近年では、カキやシジミなどの魚介類に生息するノロウイルス、生肉などに生息するO157(病原性大腸菌)による食中毒も多くみられます。
悪臭や煙、タバコの吸いすぎ
空気が汚れた場所や排気ガスなどの不快な臭いで嗅覚が刺激されると、吐き気を感じることがあります。
また、タバコにはニコチンなどの有害物質が含まれているため、吸いすぎると吐き気を引き起こします。
吐き気をともなう疾患
吐き気を引き起こす病気として、以下のようなものが挙げられます。
急性胃炎
暴飲暴食、ストレス、また、ウイルスやピロリ菌の感染、食中毒、アレルギーなどが原因で、胃の粘膜がただれ、みぞおちが突然痛むことがあります。
胃の痛みのほか、吐き気や下痢をともなうこともあり、ひどいときには嘔吐や吐血、下血を起こすこともあります。
多くの場合、2~3日安静にすることで症状は治まります。
胃潰瘍
胃潰瘍は、食べ物を粥状に消化するために分泌される胃酸が、何らかの原因によって胃粘膜まで消化してしまうことで、胃の壁がただれて傷つき、ひどい場合には胃壁の筋層まで傷つけてしまう状態です。
症状の三大特徴として、痛み・出血・酸が出過ぎることによって起こる症状(胸やけ、呑酸)といわれています。
治癒と再発を繰り返す胃潰瘍は、ピロリ菌感染による影響も指摘されています。
腹膜炎
腹腔内に何らかの炎症が生じ、その炎症が腹膜にまで波及する病気(病態)です。
急性虫垂炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどが原因で胃や腸に穴が開いてしまっていること(消化管穿孔)や、腸閉塞によって腸の組織が部分的に壊死している(絞扼性腸閉塞)などが原因で起こります。
代表的な症状は腹痛ですが、そのほか高熱、吐き気、嘔吐、呼吸苦障害などがあります。
適切な処置を行わなければ、命に関わる場合もあるため注意が必要です。
虫垂炎(盲腸炎)
お腹の右下辺りにある盲腸の先についている虫垂という部分に炎症が起こる病気です。
突然みぞおちやおへそが痛くなり、次第に右下腹部へと痛みが移動するのが特徴です。
吐き気や嘔吐、発熱をともない、放置すると、重篤な腹膜炎を起こす危険もあります。
肝炎、胆石症、膵炎
肝炎ウイルスに感染して起こる急性肝炎では、黄疸、発熱、全身倦怠感、吐き気・嘔吐などの症状があらわれます。
また、胆汁が固まって胆嚢や胆管内に結石ができる胆石症や、たんぱく質を分解する酵素が膵臓自身を攻撃してしまう膵炎も、腹痛や吐き気、嘔吐の症状がみられます。
予防法
予防のためには、日常生活でできるところからまずは気を付けていきましょう。
食べすぎ・飲みすぎをしないようにする
胃に負担をかけないよう、暴飲暴食を避けましょう。
刺激の強い食べ物や、脂っこい食べ物を控え、消化の良いものを選ぶことが大切です。
アルコールは適量を守り、自分のペースでゆっくり飲みましょう。
また、空腹状態で飲酒すると、血中のアルコール濃度が高くなり、吐き気を起こしやすくなります。
つまみ類を食べながら、ゆっくりと飲むようにしましょう。
ストレスを溜めない
ストレスは体に大きな負担をかけ、吐き気の原因となることもあります。
読書やお風呂、音楽鑑賞など、自分なりのストレス解消法を見つけストレスを溜め込まないようにしていきましょう。
食べ物の鮮度、生水に注意する
気温も湿度も高く、食中毒が増える6~9月頃の時期は、食品が腐敗しないよう食品の鮮度を冷蔵庫で保ちましょう。
まな板や包丁などの調理用具を清潔にする配慮も欠かせません。
また、特に気を付けたいのは海外旅行中の飲料です。
生水(水道水)を飲むことは避け、屋台などでの果汁飲料や氷にも注意をしましょう。
対処法
安静にする
吐き気が起きたときは、衣服をゆるめ、横になって静かに休み、安静にしましょう。
特にめまいを伴う吐き気の場合は、転倒に注意し、横になれる場所に移動しましょう。
市販の薬を使う
食べ過ぎ・飲み過ぎによる吐き気には、胃腸薬を服用しましょう。
また、ストレスから吐き気がくる場合は、神経性胃炎に効能のある胃腸薬が効果的です。
最近では、症状ごとに選べる漢方処方の胃腸薬もあります。
どれがいいかわからないというときには、薬剤師に相談してみましょう。
吐き気がある場合には、まずは医療機関へ
吐き気には、生活習慣や大きなストレスなど、さまざまな原因があります。
まずは、その原因を見極めることが大切です。
なかには、命にかかわる場合もあります。
吐き気がある場合には我慢せず、すぐに医療機関を受診してみるようにしましょう。